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引き継ぎ資料を渡さずに、仕事はできへん|コンテキストエンジニアリング

AIが前提を知らないのは、渡していないからです。何を・いつ・どれだけ読ませるかの選び方と、渡しすぎると忘れ始める理由を解説します。ファイル添付とカスタム指示だけで、今日からできます。

AI大将が、引き継ぎ資料のファイルを抱えた新人のAI社員に、渡す資料を選んで手渡している図

ChatGPTやClaudeに、毎回おんなじ説明をしてへんか。「わしの店は」「わしの言い回しは」と、一から言い直すたびに、地味に時間を食われる。長く話してたら、途中で前の話を忘れられたこともあるやろ。それ、AIの物覚えが悪いんやなくて、渡し方の問題や。今日は、何を・いつ・どれだけ読ませるかという「渡す資料選び」の話をするで。

結論:AIが前提を知らんのは、渡してないからや

先に答えを言うとく。AIが自分の前提を分かってへんように見えるのは、こっちが渡してへんからです。指示文だけを見て「なんで分かってくれへんねん」と思うかもしれへんけど、AIに渡っているのは、実は指示文だけやない。添付したファイル、これまでの会話履歴、検索した結果、あらかじめ設定した記憶。この全部を合わせて、AIは答えを組み立てとる。

ここで大事なことが1つある。**渡す量は、多ければ多いほどええわけやない。**渡しすぎると、AIは処理の限界に近づいて、逆に忘れ始めます。少なすぎると、前提が分からないまま答えることになる。何を・いつ・どれだけ読ませるか。この選び方を決めるのが、コンテキストエンジニアリングという考え方や。

人に例えるなら、渡す資料選びそのものです。新人の机に、関係ある資料もない資料も全部山積みにして「これ読んどいて」と言う上司はおらん。必要なマニュアルだけ、必要なタイミングで渡す。それだけで、新人の仕事は驚くほどはかどる。AIも同じや。

前回の記事では、頼み方(プロンプト)の話をした。役割・条件・形式・禁止事項の4つを渡せば、AIへの指示は安定する。せやけど、頼み方だけでは足りひん場面がある。**「誰として書くか」までは伝わっても、「わしの店がどんな店か」までは伝わってへんからや。**その隙間を埋めるのが、今日の話になる。

この記事で分かること

  • AIに渡っているのは指示文だけやない、と分かる
  • 渡しすぎると忘れ始める、渡さなすぎると前提が分からない、という量の感覚が分かる
  • 検索も実はコンテキスト設計の一部やった、という気づきが得られる
  • 毎回説明していることを1つ書き出して、固定で読ませる具体的なやり方が分かる

5つのうち、いまはこの話

AI社員を育てる話は、5つの設計思想でできとる。頼み方(プロンプト)、渡す資料(コンテキスト)、机と道具(ハーネス)、出す前の確認(ループ)、分業(グラフ)。前回、うちの新人ハツネには、役割・条件・形式・禁止事項という4つの頼み方を覚えてもらった。

今回はその続き、2つ目の考え方や。頼み方がどれだけ整っていても、ハツネがわしの店のことを何も知らんかったら、毎回一般論しか返ってこん。今日決めるのは、ハツネに何を渡して、わしのやり方を覚えてもらうかという話やで。

5つの設計思想を並べたカードの中で、コンテキストのカードだけ濃紺に色づいている図解

山積みの資料を渡す上司は、指示してへんのと一緒

新人が入ってきた初日を、もう一度思い出してほしい。分厚いマニュアル、過去の議事録、取引先の一覧、社内規定。これ全部を一度にドサッと机へ積んで、「一通り目を通しといて」とだけ言う上司がいたら、その新人は困ってしまうやろ。どこから読んでいいか分からへんし、今日の仕事に何が関係あるのかも分からへん。

これは、指示していないのとほぼ同じ状態です。渡した量は多いのに、伝わった量はゼロに近い。逆に、必要なマニュアルだけ、今日の仕事に関係する分だけを渡された新人は、すぐに動き出せる。渡す量と、伝わる量は、比例せえへんのや。

AIへの指示でも、まったく同じことが起きます。「参考にしてください」と、関係ある資料もない資料も全部添付する人がおるけど、これは山積みの机とやってることが同じや。AIは全部読もうとするぶん、逆にどこに注目すればいいか分からんくなる。情報を渡すことと、伝えることは、別の作業やで。

新人に仕事を頼むとき、頭の中で無意識にやっとることがある。「この仕事には、あのマニュアルの3ページ目だけ必要やな」「取引先の一覧は、今回は関係ないから渡さんでええ」。この取捨選択そのものが、コンテキストエンジニアリングの正体や。専門用語で聞くと難しそうやけど、実はもう普段からやっとる判断なんや。

もう少し具体的に想像してみてほしい。新人に「今日、A社さんへ見積もりを出しといて」と頼むとき、渡すのはA社の過去の取引履歴と、今回の見積もり条件くらいや。B社やC社の資料まで一緒に渡す上司は、まずおらへんやろ。今回の仕事に関係ない資料を渡されると、新人は「これも読まなあかんのかな」と余計な時間を使ってしまう。関係ない資料を渡すことは、優しさやのうて、むしろ相手の負担になる。この感覚を、AIへ渡すときにもそのまま持ち込んだらええだけの話なんや。

実は、もう渡してます

「コンテキストエンジニアリング」と聞いて、自分には縁のない話やと思った人もおるやろ。せやけど、実は多くの人がもう無自覚にやってます。

チャットにファイルを1つ添付したことがある人は、コンテキストを渡してる。会話を続けながら「さっき言ったあの件やけど」と聞いた人は、会話履歴というコンテキストを利用してる。そして、これがいちばん見落とされてる事実なんやけど、インターネット検索も、実はコンテキスト設計の一部です。

AIに「これ検索して答えて」と頼んだ瞬間、その人はもう「検索結果という新しい資料を渡す」という判断をしとる。検索をオンにするかオフにするか、どんな検索語で調べさせるか。ここまで含めて、全部コンテキストの設計や。「専門知識がいる話」やと構えとった人ほど、ここで拍子抜けするんちゃうかな。もうやってるんや。

日常でやっていることコンテキストでいうと
ファイルを添付するそのファイルの中身を渡す
「さっきの件やけど」と続きを聞く会話履歴を渡す
検索をオンにして聞く検索結果という資料を渡す
カスタム指示に前提を書く毎回自動で読ませる資料を渡す

この表を見て、「あ、全部やったことある」と思った人は、もう入口に立っとる。ここから先は、なんとなくやってきたことに、選び方の基準をつけていく作業になる。**無自覚から自覚に変えるだけで、精度はぐっと上がる。**なぜなら、無自覚にやっているうちは、渡す量も渡すタイミングも行き当たりばったりになるからや。意識して選ぶようになった瞬間、同じ操作でも結果が安定しはじめる。

検索を例に、もう少し踏み込んでおくで。「最新のキャンペーン情報を調べて、案内文を作って」とだけ頼む人と、「〇〇市の飲食店向けキャンペーンに絞って調べて、案内文を作って」と頼む人では、渡している検索の範囲が違う。前者は広く浅く拾ってくるし、後者はピンポイントで拾ってくる。どちらが良い悪いやのうて、**何を調べさせるかまで含めて、渡す資料を決めているということや。**検索窓に何を打ち込むかも、実はもうコンテキストの一部になっとる。

多すぎても、少なすぎてもあかん

ここが、この記事でいちばん伝えたいところや。わし、正直この話だけは絶対に端折りたくない。「情報を渡せば渡すほど、AIの答えは良くなる」と思っとる人が、実はかなり多い。でも、それは半分しか合ってへん。

AIには、一度に処理できる量に限りがあります。これは容量の問題であって、故障やない。人にたとえたら、机の広さと同じや。3つの机を想像してみてほしい。1つ目は資料が何もない机。何も分からんまま仕事をせなあかんから、当たり障りのない一般論しか出てこん。2つ目は、必要な3冊だけが置かれた机。手を伸ばせばすぐ届いて、どこに何があるかもすぐ分かる。3つ目は、資料が山積みになった机。3つ目は、1つ目よりさらに悪い状態になることがある。どこに何があるか分からんまま、大事な情報が山の下に埋もれてしまうからや。

多すぎると忘れ始める、というのはこういうことです。渡した情報の量が処理の限界に近づくと、AIは全部を均等に覚えていられんくなる。結果として、後から渡した情報を優先したり、逆に大事な前提を見落としたりする。これは、AIが手を抜いとるわけやのうて、机が資料で埋まりすぎて、何がどこにあるか見えんくなっとるだけや。**渡した側の問題として捉えといてほしい。**AIを責める話やないで。

少なすぎる方も、当然困る。前提が何も渡ってへんかったら、AIは想像で埋めるしかない。わしの店の雰囲気も、よく来るお客さんの層も知らんまま書かれた返信は、どこにでも貼れる一般論になる。ちょうどいい量。ここを狙うのが、この考え方の肝や。

実際にありがちな失敗を1つ挙げとく。長い会話を1つのまま延々と続けて、途中から関係のない相談まで全部同じ会話に詰め込んでしまうケースや。最初は「お客さん対応の相談」やったのに、途中で「経理の書類の書き方」も聞いて、さらに「来週のイベント企画」も相談する。1つの会話にどんどん資料と話題を積み上げていくと、AIはどの話題を優先すればいいか分からんくなって、前半で話した大事な前提を後半で忘れることがある。**話題が変わったら、会話も分ける。**これだけで、机の上を整理整頓しておくのと同じ効果が出る。

資料なしの机、必要な3冊だけの机、資料が山積みの机を並べ、真ん中の机がちょうどいいと示す図解

ハツネに、わしのやり方を覚えてもらう

理屈だけやとイメージしにくいから、実際にハツネへ渡してみるで。任せる仕事は、これまでと同じ「お客さんからの問い合わせに、返信の下書きを用意する係」や。

まず、何も渡さずに頼んだ場合。前回覚えた役割・条件・形式・禁止事項はちゃんと書いた上で、「お客さんから配送遅延の問い合わせが来た。返信を作って」とだけ頼んだとする。

このたびは、商品の到着が遅れておりますこと、深くお詫び申し上げます。
現在、状況を確認しております。
今しばらくお待ちいただけますと幸いです。

丁寧やし、形式も整っとる。でも、どこか他人事っぽい。わしの店らしさが1つもない。お客さんが読んでも、「これ、テンプレやな」と気づかれてしまうかもしれん。頼み方は前回でしっかり固まったのに、まだ何かが足りてへん。

次に、同じ依頼の前に、次の3つを先に読ませておく。

・過去に出した返信文3本(配送遅延、返品対応、商品説明の問い合わせ)
・使ってほしくない言い回し(「深くお詫び申し上げます」は使わない、「幸いです」で終わらせない)
・お客さんの層(常連さんが多く、少しくだけた敬語で話す)

「過去に出した返信文3本」がどんなもんか、中身が見えへんと、この後の変化が本物かどうか判断できひんやろ。1本だけ、実際の中身を見せとく。返品対応で過去に送った返信や。

このたび商品の返品をご希望とのこと、承知しました。
お手数ですが、届いた状態のまま着払いで返送していただけたら助かります。
到着が確認でき次第、返金の手続きを進めますね。

丁寧語は崩してへん。せやけど「承知しました」「助かります」「進めますね」くらいの、少し肩の力を抜いた言い方になっとる。これが、わしの店の「少しくだけた敬語」の実物や。この3本を先に読ませた上で、同じ配送遅延の問い合わせに返信を作らせると、こう変わる。

配送が遅れてしまって、ご心配をおかけしてすみません。
今、配送状況を確認していますので、分かり次第すぐにあらためてご連絡しますね。
もうしばらくだけ、お待ちいただけたら助かります。

言葉遣いが変わっとるのが分かるやろ。「深くお詫び申し上げます」は使われてへん。さっき見せた返品対応の返信文と同じ、「承知しました」「助かります」に近い温度になっとる。丁寧さは保ったまま、常連さんへ少し肩の力を抜いて話しかける言い方や。頼み方は前回とまったく同じや。変わったのは、事前に何を読ませたかだけ。

この違いを生んだのは、AIの賢さやのうて、渡した資料の中身や。過去の返信文を読ませたから、わしの言い回しの癖を拾えた。使ってほしくない言い回しを渡したから、それを避けられた。お客さんの層を渡したから、温度感が合った。**頼み方(プロンプト)は「何をしてほしいか」を伝えるもんで、渡す資料(コンテキスト)は「その仕事の前提」を伝えるもんや。**この2つが揃って、はじめてわしの言葉で返信が書けるようになる。

もう1つ、別のパターンも見ておくで。今度は、返信文を3本ではなく10本渡してみた場合や。数を増やせば増やすほど良くなりそうな気がするけど、実際にやってみると、10本目あたりから返信の傾向がぶれ始めることがある。3本のときは一貫して常連さん向けの温度やったのに、10本の中に初めてのお客さん向けの丁寧な返信が混ざっていたせいで、AIがどっちの温度で書けばいいか迷ってしまうんや。**同じ場面の返信を選んで渡す。**数より、渡す中身の一貫性のほうが効く、という一例やで。

ここまで見ると、「毎回この3つを用意するのは面倒やな」と思うかもしれへん。それも正しい感覚です。次の章で、実際にわしがどう解決しとるかを話すで。

資料なしで書かせた返信文と、過去の返信3本を読ませて書かせた返信文を左右に並べたビフォー・アフター図解

わしの現場では|3つの引き継ぎ資料

ここからは、わしが実際にやっとることを話すで。どこからが実体験か、はっきり分かるように書く。この記事自体も、これから見せる資料をハツネ(に見立てたAI)へ読ませた上で書いとる。抽象的な説明で終わらせるより、実物を見せたほうが早いと思うんで、一部そのまま出す。

使ってほしくない日本語のリスト

わしが記事を書かせるとき、必ず最初に読ませとるのが、使ってほしくない日本語のリストや。実物を少しだけ見せる。

禁止:「いかがでしたか」「いかがでしょうか」「参考になれば幸いです」で終える
理由:何も言っていない。読者が得た結論を書かずに文章を閉じている
代わりに:読者が今日から実際に変える一つの行動、または判断基準を書いて終える
 
禁止:「〜において」「〜に関して」「〜における」の多用
代わりに:「〜では」「〜については」など、こなれた言い方に置き換える。多くは省いても意味が通る
 
禁止:「〜させていただきます」の連発
代わりに:「〜します」で言い切る。謙譲語を積み重ねない

このリストは、この記事を書くときにも実際に読ませとる。他にも、「〜かもしれません」を判断を避けるために使わない、根拠なく「ご安心ください」を使わない、といった項目が並んどる。

このリストを用意する前は、毎回の依頼で「こういう言い回しは使わんといて」と書き直しとった。せやけど、それやと毎回同じ注意を繰り返すだけで、時間ばっかり食う。使ってほしくない言い回しは、頼むたびに変わるもんやない。**一度リストにしてしまえば、あとは毎回それを読ませるだけでええ。**このリストを固定で参照させるようにしてから、書き直しの回数が目に見えて減った。

このリストは、最初から完成していたわけやない。記事を書かせるたびに、「これは違うな」と感じた言い回しを1つずつ足していった。今も、新しい記事を出すたびに見直して、気になったら1行足す。完成させてから使い始めたんやのうて、使いながら育ててきたリストや。

このリストには、文末の温度感に関する基準も書いてある。

です/ます調(丁寧語)で終わる文 :全体の4割前後
関西弁・casual体(や/で/へん/んや/とる/やで 等)で終わる文 :全体の6割前後

これは、わしが実際に手を入れた過去記事の文末を数えて出した比率や。事実の説明は標準語でも、文末表現までです/ます調で揃えてしまったら、それはもう「わしの言葉」やのうなる。この記事も、公開前にこの比率を数えて出しとる。「渡す資料は、内容だけやのうて検証の基準にもなる」というのが、このリストを使こてて分かったことや。

過去の投稿391件から作った、自分の口調

これがいちばん強い実例やと思っとる。わし、SNS投稿を書かせるとき、過去に自分が出した投稿391件をAIに読ませて、口調のプロファイルを作らせたんや。文末の癖、よく使う言い回し、話の展開のさせ方。この391件から、わしらしい話し方を言語化して、1つの資料にまとめた。

その資料を、投稿文を書かせるたびに裏側で参照させとる。すると、AIがゼロから「らしい文章」を想像するんやなくて、わしが過去に実際に書いた391件そのものが、材料になる。「自分の文章が書けない」と思っとる人にこそ、これは伝えたい。過去に自分が書いたものが、すでにいちばん確実な資料やねん。ゼロから口調を教え込む必要はない。過去の自分に語らせたらええだけや。

391件と聞くと、ものすごい量に感じるかもしれへん。せやけど、これは特別な準備やなくて、もう自分の手元にあるものを集めただけの作業や。過去のメール、過去のブログ、過去のSNS投稿。仕事をしとったら、誰でも自分の言葉で書いたものがどこかに残っとる。それを1か所に集めて読ませるだけで、口調の資料になる。ゼロから「自分らしい文章の書き方」を言語化しようとすると難しいけど、すでにある文章を読ませて分析させるほうが、はるかに早い。

作業ルールと、記憶を分けて持つ

もう1つ、実務でやっとるのが、作業ルールを書いたファイルと、記憶を分けて持たせることや。これも、中身を少しだけ見せる。

まず、なんでこのプロジェクトをやっとるかを書いたクレド(VISION・MISSION・VALUE)。

手段より、目的。流行や目先の利益に振り回されず、何のために取り組むのかを起点に判断する。
完璧より、前進。完璧な準備を待たず、まず試す。小さく動き、改善しながら前へ進む。
成功より、過程。良い結果だけを見せない。迷い、失敗、修正、解決までの試行錯誤をひらく。
難解より、実用。難しい技術を難しいまま渡さず、実際に使える言葉と手順に変える。

このクレドは、記事の書き方に直結しとる。「難解より、実用」は、専門用語をそのまま渡さず日常語に置き換える判断基準そのものや。この記事で「コンテキストエンジニアリング」より先に「渡す資料選び」を出したんも、この1行が理由やで。

もう1つ、記事を書く手順を書いたファイルには、こういう一文が入っとる。

標準語を基本にし、AI大将の語りかけへ自然な関西弁を使う(一人称「わし」)。
事実の説明は標準語、読者への語りかけ・鼓舞・締めくくりの部分に関西弁を使う。
確認できたことだけを書く。確認できていないことは、そもそも書かない。

いま読んでもろてるこの文章も、このルールに従って書かれとる。「その仕事だけの資料」と「毎回共通のルール」を分けて渡すという話を、説明だけで終わらせるより、実物のほうが早いと思って、ここに置いた。

ここで意識しとるのは、**「その仕事だけに必要な資料」と「どんな仕事でも共通のルール」を、同じ場所に混ぜないことや。**混ぜてしまうと、次に別の仕事を頼んだとき、関係ない資料まで一緒に読ませることになる。分けておけば、必要な組み合わせだけを選んで渡せる。この分け方は、専門的なツールを使こてやっとることやけど、考え方自体はチャット画面でも真似できる。プロジェクト機能に「共通ルール用」と「今回の仕事用」を分けて置くだけで、同じことができるで。

作業ルールを書いたファイルは、頼み方(プロンプト)とも少し役割が違う。頼み方は「今回のこの依頼で、何をしてほしいか」を伝えるもんで、作業ルールは「毎回どの依頼でも共通して守ってほしいこと」を伝えるもんや。**依頼のたびに変わるものと、変わらないもの。**この2つを分けて考えるようになってから、資料の置き場所で迷うことがほとんどなくなった。

やり方|毎回説明してることを、1つ書き出す

理屈と実例は分かった。あとは、今日あなたの仕事でも試せる手順に落とし込むで。

  1. **毎回AIに説明していることを1つ選ぶ。**わしの店の雰囲気、よく使う言い回し、お客さんの層。何度も同じことを書いてる、と感じるものを1つ選ぶ
  2. **箇条書きで書き出す。**長い文章にせんでええ。「常連さんが多い」「〜という言い回しは使わない」くらいの短い箇条書きで十分や
  3. **ファイルにするか、カスタム指示に入れる。**ファイルとして保存して毎回添付するか、カスタム指示やプロジェクトの設定欄に書き込んでおく。どちらでも構わない
  4. **次の依頼から、それを読ませた状態で頼む。**同じ依頼を出して、前と何が変わったかを実際に見比べる

この4ステップも、今日中に終わる。特別なツールは要らん。今使こてるチャット画面のまま、ファイル添付かカスタム指示のどちらかを使うだけでええ。

置き場所に迷ったら、こう考えたらええ。1回きりの相談やったら、その場でファイルを添付すれば十分や。同じ仕事を毎日のように繰り返すなら、プロジェクト機能やカスタム指示に固定で入れておいたほうが、毎回添付する手間そのものがなくなる。頻度が高い仕事ほど、固定で読ませる場所へ置く。この基準だけ持っておけば、置き場所で迷わへん。

自分の仕事に置き換えるための表を用意した。

決めること例(問い合わせ返信の下書き)自分に置き換える欄
毎回説明していることわしの店の雰囲気と、よく来るお客さんの層____
渡す材料過去に出した返信3本/使ってほしくない言い回し5つ____
どこに置くかプロジェクト機能に固定で入れる____
渡さないもの3年前の古い案内文、他店の資料____
今日ためすこと過去の返信3本を先に読ませてから、同じ依頼を出す____

この表で大事なんは、上から順に全部埋めることやない。**「渡さないもの」の行まで書いてほしい。**足すことばかり考えとる人が多いけど、渡さない判断も同じくらい大事や。3年前の古い案内文をそのまま渡すと、今のお客さん対応と食い違って、かえって事故のもとになる。渡す・渡さないの両方を決めて、はじめてちょうどいい量になる。

毎回説明していることを1つ書き出すという結論に向かう4つのステップと、置き場所の3択を示す図解

どこまでやるか|全部を資料にせんでええ

ここまで読んで、「自分の仕事も全部資料にせなあかんか」と気が重くなった人もおるかもしれへん。そんな必要はまったくない。これも、クレドで言う「完璧より、前進」そのものや。

最初から完璧な資料集を作ろうとすると、作る前に力尽きてしまう。よく使うものから、1つずつでええ。今週いちばん「これ、また同じこと説明したな」と感じた場面を思い出して、そこだけ資料にする。それだけで十分な一歩や。

資料が1つもない状態から、1つ用意する。この差がいちばん大きい。2つ目、3つ目は、必要になったときにまた足していけばええ。**「毎回説明していること」が減っていく実感が持てたら、それがそのままペースを教えてくれる。**焦って全部を揃える必要はあらへんで。

目安を1つ渡しとく。今週、同じ説明を2回以上した場面があったら、そこが資料にする優先順位のいちばん高いところや。1回きりしか説明してへん場面は、まだ資料にせんでええ。繰り返しが増えてきたら、そのときにまた1つ足す。この順番で進めれば、作る手間が実際に減った実感を持ちながら、無理なく資料が増えていく。

つまずきやすいところ

ここまで読んで、実際にやってみると引っかかるところが出てくるはずや。よくあるつまずきを先に潰しとく。

全部渡して忘れさせてしまう

「念のため」と、関係あるかどうか分からんファイルまで全部渡してしまう人がおる。これをやると、大事な前提が資料の山に埋もれて、AIが優先すべきところを見失うことがある。渡す前に、「これは今回の仕事に本当に要るか」を一度自分に聞いてみてほしい。要らないと判断したものは、渡さないでええ。

古い資料が混ざって事故る

一度作った資料をそのまま使い続けて、内容が古くなっていることに気づかない人もおる。半年前の価格表や、担当が変わった後の連絡先。古いままの資料を読ませると、AIはそれを最新の情報として扱ってしまう。定期的に見直して、古くなった箇所は更新しておく必要があるで。

頼み方を直さず、資料だけ足す

前回の頼み方(役割・条件・形式・禁止事項)が甘いまま、資料だけをどんどん足しても、思うような効果は出えへん。資料は「前提」を補うもんで、「何をしてほしいか」までは補ってくれん。効果が出ないときは、資料の量やなくて、頼み方に抜けがないかを先に見直してくれ。

検索させると情報が古い場合がある

検索結果を資料として渡すとき、それが最新の情報とは限らへん場合がある。特に価格や制度のように変わりやすい情報は、検索結果をそのまま鵜呑みにせず、最終的には自分の目で確認する一手間を挟んでおくと安全や。

資料を作ったまま、更新する日を決めていない

いちばん見落とされがちなのがこれや。使ってほしくない言い回しのリストも、口調のプロファイルも、作った時点がいちばん新しい。せやけど、半年後も同じ内容のまま使い続けとると、当時と今のズレに誰も気づかへんまま放置される。月に1回でええから、資料を見返す日を決めておくと、古びるスピードがぐっと遅くなる。

よくある質問

ファイルは何個まで渡していいですか?

明確な上限は、使っているサービスやプランによって異なります。ただし、この記事でお伝えしたいのはファイルの数そのものではなく、「今回の仕事に本当に必要な分だけ渡す」という考え方です。数を増やすことよりも、渡す内容を今回の仕事に絞り込むことのほうが、結果に効きます。

プロジェクト機能とカスタム指示は、どう使い分ければいいですか?

プロジェクト機能は、特定の仕事や案件にひもづく資料をまとめて置く場所として向いています。カスタム指示は、どの仕事でも共通して守ってほしいルールを書く場所として向いています。「その仕事専用の資料」と「毎回共通のルール」を分けて考えると、使い分けやすくなります。

会話が長くなったら、どうすればいいですか?

会話が長くなるほど、AIが処理する量は増えていきます。途中で話がかみ合わなくなってきたと感じたら、それまでのやりとりの要点を短くまとめ直して、新しい会話として渡し直すのも1つの方法です。長く続けることにこだわらず、必要な要点だけを引き継ぐという発想が有効です。

無料版のAIでも、この考え方は使えますか?

使えます。ファイル添付やカスタム指示は、多くの無料プランでも利用できる機能です。有料プランに切り替える前に、まずは渡す情報の選び方を見直すほうが、費用をかけずに効果を確かめられます。

まとめ|今日やる一歩

長々書いてきたけど、この記事で持って帰ってほしいのはこれだけや。

  1. AIが前提を知らんのは、渡してへんからであって、性能の問題やない
  2. 渡す量は多いほどええわけやない。多すぎると忘れ始め、少なすぎると前提が分からない
  3. 検索も含めて、実は多くの人がもうコンテキストを設計している。あとは自覚して選ぶだけ 今日やることは1つだけや。**毎回同じ説明をしていることを1つ選んで、箇条書きにして、ファイルかカスタム指示に固定で読ませてくれ。**それだけで、次の依頼から「また同じこと説明せなあかんのか」という手間が1つ減る。

今日、ハツネは引き継ぎ資料のファイルを抱えた。わしの言い回しも、お客さんの層も、もう覚えてくれとる。せやけど、資料を渡しただけでは、まだ足りひんことがある。資料を読んだハツネが、実際に自分の判断で動ける場所があるかどうかや。

次回は、机も道具もない部屋で、人は働けない|ハーネスエンジニアリングで、ハツネに机と道具を用意する話をするで。頼み方をもう一度確認したい人は、新人に「いい感じにやっといて」は通じない|プロンプトエンジニアリングを読んでおくと、今日の話がもっとつながって見えるはずや。