自分の仕事に、自分で赤ペンは入れられない|ループエンジニアリング
AIの出したものの質が安定しない原因は、同じAIに確認させていることにあります。作らせたAIと採点させるAIを分ける考え方、合格基準の決め方、そして回すほどかかるコストまで解説します。
ChatGPTやClaudeに「これでいい?」と聞いたら、たいてい「良くできています」って返ってくるやろ。でもそれ、正しい採点やない。頼んだ本人に採点させとるだけや。今日は、作らせるAIと採点させるAIを分けるだけで、出てくるもんの質がどう変わるか、その場で試せる話をするで。
結論:作らせたAIと、採点させるAIを分ける
先に答えを言うとく。**AIが作ったものは、そのまま自分に返させず、別のAIに一回見せる。**それだけや。
新しいツールは要らへん。有料プランに切り替える必要もない。今開いてるチャットとは別に、もう一つチャットを開く。それだけで、今日その場で試せる。無料版のまま試せる話やから、これはシリーズの中でもいちばん身軽な一歩になる。
この考え方は「ループエンジニアリング」と呼ばれています。作る→採点する→直す、を一周として、合格するまで回す。AIエンジニアリングの用語やけど、中身は難しくない。自分の仕事を、いったん他人の目に通してから出す。ただそれだけの話や。
この記事では、なんで同じAIに採点させたらあかんのか、合格の基準はどう決めるか、そして正直に言うと回すほどお金と時間がかかるという事実まで、隠さず届けるで。
今日この記事を読み終えたときには、あなたが今抱えとる下書きが1つ、実際にワンランク良くなっているはずや。理屈だけで終わらせる記事にはせえへん。読みながら、今使こてるチャットをもう一つ開いておいてくれ。
この記事で分かること
- 同じAIに「これでいい?」と聞いても、正しい採点にならない理由が分かる
- 作る係と採点する係を分けたら、出てくる指摘がどう変わるかが分かる
- 合格の基準を先に決めるという、いちばん抜けやすいポイントが分かる
- 回すほどかかるお金と時間、そしてどこで止めるかの目安が分かる
5つのうち、いまはこの話
AI社員を育てる考え方には、5つの柱がある。プロンプト(頼み方)、コンテキスト(渡す資料)、ハーネス(机や道具)ときて、今回はループの話や。
前回までで、うちの新人ハツネは、指示書を持ち、引き継ぎ資料を抱え、自分の机と道具まで手に入れた。ここまでで、ハツネは一人で作業できるようになっとる。でも「一人で作業できる」と「出したものがそのまま使える」は、実は別の話なんや。
ループは、この2つの間を埋める考え方。ハツネが作ったものを、そのまま人間の手元に届けさせるんやなくて、いったん別の誰かに見てもらってから出す。この一手間があるかないかで、最終的に出てくるものの安定感がまるで変わってくる。
グラフ(分担)は次回。今回はまず、「出す前に、誰かに見てもらう」というこの一点に絞って読んでくれ。

AIは、自分の答案に甘い
自分で書いた文章の誤字は、なかなか見つからへん。これは誰でも経験があると思う。何度読み返しても気づかず、印刷して初めて誤字が見つかる。人に見せて、一発で指摘されることも珍しくない。
AIにも、これと同じことが起きます。ChatGPTに文章を作らせて、その同じチャットで「これでいい?」と聞くと、ほぼ確実に「良くできています」という答えが返ってきます。これは、AIがサボっているわけではありません。自分が作ったものを、自分で厳しく見直すのが構造的に苦手という話や。
自分の直前のやりとりが、そのままチャットの中に残っとる。そこには「この方向でお願いします」という文脈も含まれてる。せやから、同じ会話の中で採点させると、その文脈込みで評価してしまう。「頼まれた通りに作れているか」を見てしまうんや。「その内容自体が本当にお客さんに送れるレベルか」という、もう一段上の視点には立ちにくい。
これは欠陥やない。人間でも、自分が書いた企画書を自分だけでチェックして提出したら、後で上司に一発で穴を指摘される。それと同じ構造がAIにも起きてるだけの話や。だから、答えは単純。他人の目を通せばええ。
これは、人がよう使こてる「推敲」という工程とも似とる。文章を書いた直後より、一晩置いてから読み返した方が、粗が見える。あれは頭が冷めて、書いた本人という立場からいったん離れられるからや。AIの場合、一晩置くという時間の経過は使えへん。せやから、時間の代わりに、別の会話という形で距離を作ったる。これが、別チャットで採点させることの正体や。
距離の作り方は、時間でも、人でも、場所でもええ。AIにとっては、それが「別のチャット」という単純な形で実現できる。人間やったら、他人に見てもらうにはその人の時間をもらわなあかん。AIやったら、チャットを1つ開くだけで、その距離を今すぐ作れるんや。
もう一つ付け加えとくと、AIに「厳しくチェックして」と念押しても、同じチャットの中では効果が薄いことが多い。頼み方の問題やなくて、そもそも同じ会話の中に「自分がさっき作った」という前提が残っとるからや。**チェックの厳しさを上げる前に、まずチェックする場所そのものを変える方が効く。**次の章で、実はもうこれをやっている人がおるという話をするで。
実は、もうやってる人がいます
AIを使い込んでいる人は、自然とこれをやっとる。「ミスがなくなるまで修正を繰り返して」と一言添えて頼む人、見たことないやろか。
この頼み方、実はループエンジニアリングの入り口や。「一発で出したものを、そのまま採用しない」という前提を、指示の中に組み込んどるわけや。名前を知らんくても、感覚として同じ発想にたどり着いてる人はもう結構おる。
ただ、同じチャットの中で「ミスがなくなるまで繰り返して」とだけ頼んでも、限界がある。さっき書いた通り、同じAIは自分の答案に甘い。何周繰り返させても、同じ視点でしか見直さへんから、見落としも同じ場所に残り続ける可能性がある。人間の職場でも、同じ人が何度も自分の資料を読み返すより、一度他の人に渡した方が早く穴が見つかるやろ。それと同じことがAIにも当てはまる。
この感覚、実は新人教育でもよう見る話や。新人に「自分で見直してから出してや」と言うだけの上司と、「出す前に、先輩の◯◯さんにも見てもらってな」と言う上司。後者の方が、明らかに仕上がりが安定する。AIに対しても、同じ理屈が働くだけの話や。
**「繰り返す」だけやなくて、「別の目で繰り返す」に一歩進めるのが、この記事の要や。**すでに感覚として近いところまで来ている人ほど、この一歩は小さい。ここから先は、その具体的なやり方に入っていく。
合格の線を、先に決める
ここが、この記事でいちばん外したらあかん部分や。別のAIに採点させる前に、何をもって合格とするかを先に決めておく。
「ミスがなくなるまで」とだけ頼むと、何がミスなのかがそもそも決まってへん。採点する側のAIも、基準がなければ「なんとなく良さそう」で通してしまうことがある。これやと、採点させる意味が半分なくなる。
合格基準は、細かく何十個も要らへん。3〜5項目で十分や。たとえば、お客さんへの返信文なら「読んだ人が次に何をすればいいか分かるか」「謝罪が何度も出てこないか」「金額や納期を勝手に確約していないか」。この程度の粒度で、自分の仕事に置き換えて先に書き出しておく。
大事なのは、基準を作る側の頭で書くんやなくて、受け取る側の頭で書くことです。「文章がうまいかどうか」やなくて、「これを読んだお客さんが困らないか」。基準の軸をここに置くと、採点させたときの指摘が実務に直結するものになる。
仕事の種類が変われば、基準の中身も変わる。SNS投稿の下書きなら「一文が長すぎないか」「言い切りすぎて誤解を生まないか」。社内向けの議事録なら「決定事項と宿題が分かれているか」「誰が読んでも同じ理解になるか」。基準を決めるコツは、普段自分が人の書いた文章を直すとき、無意識に見ているポイントを言葉にすることや。特別な視点を新しく発明する必要はない。
合格基準を決める作業そのものは、AIに丸投げできひん。**何がその仕事の及第点かは、業種や状況によって変わるから、頼む側の頭で決めるしかない。**ここだけは、人間の仕事として最後まで残る部分や。裏を返せば、ここさえ決めてしまえば、採点そのものはAIに任せられるということでもある。基準は一度決めたら固定するもんでもない。実際に運用してみて、「これは甘すぎたな」「これは厳しすぎて毎回引っかかるな」と感じたら、そのつど直していったらええ。最初から完璧な基準を用意しようとせず、まず3つ書き出すところから始めるのが早い。
基準さえ先に決まっていれば、あとは別のチャットに貼るだけや。次の章で、実際にやってみるで。
ハツネの下書きに、赤ペンを入れてもらう
うちの新人ハツネに、いつもの仕事を頼んでみる。お客さんからの問い合わせに、返信の下書きを用意する係や。今回は、配送が遅れているお客さんへの返信を頼んでみた。
まず、ハツネが最初に出してきた下書きはこれ。
このたびは商品の発送が遅れており、大変申し訳ございません。
現在、配送状況を確認しております。
何かご不明な点がございましたら、いつでもご連絡ください。
今後ともよろしくお願いいたします。
これを、同じチャットで「これでいい?」と聞くと、案の定「丁寧で問題ないと思います」と返ってきた。試しに、同じチャットのまま「もう一回厳しく見直して」とも頼んでみたが、返ってきたのは「文面は丁寧なので、大きな問題はないかと思います」と、ほぼ同じ答えやった。一度「これでいい」と判断した文脈が残ったままやと、もう一回見直しても、同じ甘さが残りやすい。
ここで終わらせず、この下書きと、さっき決めた合格基準3つを、**別のチャットへそのまま貼る。**渡したのはこれだけや。
以下の文章を、お客さん対応の観点で採点してください。厳しく見てください。
基準①:読んだ人が、次に何をすればいいか分かるか
基準②:謝罪が3回以上出てこないか
基準③:価格・納期を確約していないか
別のAIが返してきた指摘は、こうやった。
①読んだ人が次に何をすればいいか分からない。「確認しております」だけで、いつ分かるのかが書かれていない。
②謝罪の言葉が明示的に多いわけではないが、「大変申し訳ございません」と「ご不便」に関する謝意が重なっており、内容の薄さを謝罪で埋めている印象がある。
③「今後の目安」が一切ないため、納期未確約というより、そもそも情報が不足している。
同じAIが自分で見たときは「問題ない」やったのに、別のAIに基準付きで見せると、ここまで具体的な指摘が出てくる。この差が、ループエンジニアリングの効き目そのものや。
この指摘を、元のチャットへそのまま戻して直させると、ハツネの下書きはこう変わった。
このたびは、商品の発送が遅れておりご迷惑をおかけしております。
現在、配送状況を確認しており、本日中にあらためて詳しい状況をご連絡いたします。
今しばらくお待ちいただけますと幸いです。
「いつ分かるのか」が入り、謝罪が1回に整理され、価格や納期を確約せずに次の連絡時期だけを示した。書いたのはハツネのままや。変わったのは、出す前に誰かの目を通したかどうか、それだけ。
ここで注目してほしいのは、最初の下書きが「悪い文章」やなかったということや。丁寧やし、日本語としても破綻していない。それでも、お客さん対応としては情報が足りていなかった。**文章としての出来と、実務で使えるかどうかは、別の軸で見なあかん。**同じAIに「これでいい?」と聞いただけでは、この2つの軸を混同したまま「良くできています」で終わってしまう。基準を渡した別の目が入って初めて、実務の軸で穴が見えるようになる。
ここで大事なのは、採点役の指摘を鵜呑みにすることやない。指摘された箇所を見て、「たしかにその通りやな」と自分でも納得できるかどうか、そこは人間が最後に見る。採点役は、あくまで見落としを拾ってくれる係であって、判断そのものを丸ごと渡す係やない。

わしの現場では|崩れがなくなるまで回す
ここからは、わしが実際に動かしとる話をするで。この考え方、記事の下書きだけやなくて、わしの現場ではもっと広く使うとる。
ここで挙げる3つは、どれもある程度作り込んだ仕組みの上で動かしとる。読者のみなさんが、今日からこれと同じ仕組みを作る必要はあらへん。**チャットを2つ開くだけでも、考え方はまったく同じように使える。**自動化するかどうかは、あとから考えたらええ話や。
一つ目は、画像生成のスキルや。日本語の文字を画像に入れると、文字化けしたり画数がズレたりすることがようある。生成したらそれで終わりやなくて、AIのビジョン機能を使こて生成物を見直させて、崩れがあれば部分修正、あかんかったらプロンプトを変えてもう一回作らせる。**崩れがなくなるまで、これを回す。**ゲームでいう「SSRが出るまで引き続ける」発想やな。1回目でそこそこの出来が出ることもあるけど、2周3周と回すことで、明らかに質が跳ね上がる場面が多い。「見た目のチェック」と「作った本人のチェック」を分けるという意味では、これも作る係と採点する係を分けとるのと同じ構造や。
二つ目は、記事の生成や。この記事のシリーズも含めて、書き上げた記事をそのまま出さず、別のスレッドで確認してもらっとる。**チェックリストの項目に沿ってちゃんと守れているかを見てもらい、その結果を見て、直すか作り直すかを判断する。**フォーマットのルール、NG表現のリスト、見出しの構成。作った本人のスレッドのまま「これでいい?」と聞くんやなくて、チェック専用のスレッドを別に立てて、そこで一つずつ照らし合わせてもらっとる。
三つ目は、システム開発や。バイブコーディングで要件から設計書を作ったとき、その設計書をそのまま実装に進めず、別のスレッドで「この設計で問題ないか」を確認してもらっとる。**設計の段階でここを一度挟んでおくと、実際に実装したあとの手直しがはっきり減る。**これは肌感覚やのうて、何度も経験して分かってきたことや。設計の甘さを実装が終わったあとで見つけるより、実装に入る前に見つけたほうが、直す手間そのものが何倍も軽い。
この3つ、どれも「1回作らせて終わり」やない。**出す前に、別の視点で見直す工程を挟んどる。**これがループエンジニアリングの実務での姿や。3つとも共通しとるのは、最初の出力をそのまま信用せず、必ず見直す係を挟んどるという点や。人によって、この係をAIにするか自分にするかは変わってええ。大事なのは、係を挟むという発想そのものやで。ただ、これを全部自動でやってるかというと、そうでもない。回数を重ねるほど処理も時間もかかるから、次の章で正直に書いとく。

お金と時間はかかります
ここは正直に書く。ループを回すぶん、お金と時間がかかります。
作る→採点する→直す、この一周だけでも、AIへの呼び出しが最低2回は増える。合格しなければもう一周、さらに一周。1回で済むはずの処理を、何回も繰り返すわけやから、費用は単純にその回数ぶん膨らみます。特に上位モデルで採点までさせると、1回あたりの単価も上がるので、費用の伸び方はさらに大きくなる。
「回せば回すほど良くなるから、とにかく回そう」という書き方はせえへん。実際には、回すほど良くなるとは限らへんし、良くなったとしても、そこにかかったお金と時間に見合うかは別の話や。3回目でようやく気づく指摘もあれば、2回目以降はほとんど同じ指摘の繰り返しになることもある。
現実的な判断としては、軽い作業には下位モデルを使い、大事な最終確認だけ上位モデルに任せるという使い分けがちょうどええ。作る段階は普段使っとる標準モデルのままでよくて、採点だけワンランク上のモデルに任せる、という組み合わせでも十分効果が出る。全部を上位モデルで回す必要はあらへん。
社内向けのメモや、自分だけが見る下書きの段階では、無理にループを回す必要はあらへん。お客さんに直接届く文章、外部に出る資料。ここぞという場面でだけ、コストをかけてループを回す。**どこにお金と時間をかけるかを、先に自分で決めておく。**これが、この考え方と正しく付き合うための前提になる。時間の面でも同じで、急ぎの返信には向かへん。1周ごとにやりとりの往復が発生するから、その分だけ時間もかかる。急ぎのときは基準チェックだけ自分の目で済ませて、ループは時間に余裕がある仕事に使うという線引きもありや。
正直に言うと、この記事自体もループを使こて書いとる。下書きを作って、別の目で確認して、直す。その分の時間とコストは、当然かかっとる。**ええところだけ見せて、かかる手間を隠すのは、わしのやり方やない。**AIを使いこなしてる人ほど、この裏側のコストを分かった上で、使う場面を選んどるもんや。
どこまでやるか|毎回2周でええ
ループは、無限に回すものやない。**合格したら、そこで止める。**回数の上限を先に決めておかんと、コストが読めなくなる。
目安としては、毎回2周まででええ。1周目で指摘をもらい、直して2周目にもう一度採点させる。それで合格が出れば終わり。2周やっても合格が出なければ、そこから先は自分で仕上げの判断をする。3周、4周と無限に回し続けても、指摘の中身がだんだん細かくなっていくだけで、費用対効果が下がっていくことが多い。
「AIの判断が完璧になるまで、とことん回す」という考え方はしません。**人間の最終判断を、最後まで自分の手元に残しておく。**2周でも直らへんかったところは、AIに何周させるかより、自分がどこを直すかを見た方が早いことが実務ではよくある。
この線引きがあると、ループを使う気持ちのハードルもぐっと下がる。「回し始めたら止まらへん」という不安がなくなれば、気軽に別のチャットを開ける。
上限を決めておく効果は、コストだけやない。**「何周までやったら、次はこうする」というルールが先に決まっていると、迷う時間そのものがなくなる。**2周で通らんかったら、粘らずに自分で直す。この判断が先にあるだけで、作業全体のスピードが上がるんや。回数の上限は、仕事の重さで多少動かしてもええ。お客さんに直接届く文章なら2周、社内でしか使わへん資料なら1周で十分、というふうに、自分の中で軽重をつけておくと判断が速くなる。次の章で、実際の手順に落とし込むで。
やり方|チャットを2つ開くだけ
理屈が分かったところで、今日やる手順に落とし込むで。
- **合格基準を3つ書く。**自分の仕事に置き換えて、「読んだ人がどう思うか」の視点で3つ決める
- **別のチャットを開く。**今作らせているAIとは別に、新しい会話を1つ立ち上げる
- 成果物と基準を貼って、採点させる。「厳しく見てください」と一言添えて、成果物と基準の両方を貼る
- **指摘を元のチャットへ戻して、直す。**返ってきた指摘をそのままコピーして、最初にAIが作った下書きの続きに貼り、直させる
Claude Codeを使こてる人なら、会話の流れを持たないサブエージェントに採点させると、さらに俯瞰した指摘が返ってくる。もっと徹底したい人は、Codexなど全く別のAIサービスに接続して見せると、視点そのものが違う指摘が返ってくることもある。ただ、これは応用の話や。まずは、いつも使こてるチャットをもう一つ開くだけで十分に効果が出る。
ここまでの4ステップ、実際にやってみると、③の「厳しく見てください」を書き忘れる人が多い。この一言があるかないかで、採点役が遠慮するかどうかが変わってくる。忘れんように、テンプレとしてどこかにメモしておくのもええ手やで。
自分の仕事に置き換えるための表を用意した。うちのハツネに問い合わせ返信を任せた例と、自分の欄を並べて書けるようにしとる。
| 決めること | 例(問い合わせ返信の下書き) | あなたの場合 |
|---|---|---|
| 採点してもらうもの | お客さんへの返信の下書き | ____ |
| 合格基準① | 読んだ人が、次に何をすればいいか分かる | ____ |
| 合格基準② | 謝罪が3回以上出てこない | ____ |
| 合格基準③ | 価格・納期を確約していない | ____ |
| 何周まで回すか | 2周まで。それで通らなければ自分で直す | ____ |
この表でいちばん大事なのは、最後の行や。**「何周まで回すか」を先に自分の欄へ書いておく。**ここを決めずに始めると、さっき書いたコストの話がそのまま自分に返ってくる。基準3つと上限、この2つさえ埋めれば、今日その場で試せる。

つまずきやすいところ
実際にやってみると、いくつか引っかかるところが出てくる。よくあるつまずきを先に潰しとく。
同じチャットで採点させてしまう
いちばん多いつまずきがこれや。「これでいい?」を、作らせたのと同じ会話の続きで聞くと、さっき説明した通り、AIは自分の文脈込みで評価してしまう。**採点は必ず別のチャットで。**このひと手間を飛ばすと、ループを回した意味がほとんどなくなってしまう。面倒に感じても、たった1タブ増やすだけの話や。ここをケチると、他のところをどれだけ丁寧にやっても、結局出発点の甘さがそのまま残ってしまう。
合格基準を決めずに回してしまう
「とにかくミスがないか見て」とだけ頼むと、採点する側も基準がないまま「良さそうです」で通してしまうことがある。基準は3つで十分やから、必ず先に自分の言葉で書き出してから採点させてくれ。書き出すのに時間をかけすぎる必要もない。過去に自分が直したことのある箇所を1つ思い出すだけでも、立派な基準になる。
無限に回してお金がかかる
合格の線を決めずに回し続けると、費用がどこまでも膨らんでいく。毎回2周までという上限を、始める前に自分の中で決めておく。2周で合格が出なければ、そこから先は自分の判断で仕上げる。上限を先に決めておけば、「もう1周だけ」の誘惑に流されにくくなるで。
採点役に優しくさせてしまう
「良いところも教えて」「厳しくしすぎないで」と頼んでしまうと、採点役も遠慮した答えを返してくる。採点させるときは「厳しく見てください」と明確に書く。優しい採点は、結局同じAIに聞いたときと同じ結果になってしまう。褒め言葉が返ってきたら、それは合格の証やなくて、基準の伝え方が甘かったサインやと思っといたほうがええ。
よくある質問
採点役には、必ず別のAIサービスを使う必要がありますか?
いいえ、必須ではありません。同じAIサービスでも、新しく会話を立ち上げれば、その会話には元のやりとりの文脈が引き継がれません。まずは同じサービスの別チャットで十分効果が出ます。Claude Codeのサブエージェントや、ChatGPTとClaudeのように違うサービスを組み合わせる方法は、さらに俯瞰した指摘が欲しいときの応用として使ってください。
無料版のAIでもこのやり方はできますか?
できます。この記事で紹介した手順は、チャットを2つ開くだけで完結します。有料プランやAPIの契約は必要ありません。ただし、何周も回すほど処理回数が増えるので、無料版には利用回数の上限が設けられているサービスもあります。回数の上限に達したら、次の章で説明した「毎回2周まで」という目安を守っておくと安心です。
何周くらい回すのが適当ですか?
目安は2周までです。1周目で指摘をもらって直し、2周目でもう一度採点させて合格が出れば終わりにします。それでも合格が出ない場合は、指摘の中身が細かくなっているだけのことが多いので、そこから先は自分で仕上げの判断をしてください。無限に回すことを前提にすると、費用も時間も読めなくなります。
採点役に渡すプロンプトは、どう書けばいいですか?
「厳しく見てください」という一言と、合格基準を3つ添えるだけで十分です。「以下の文章を、〇〇の観点で採点してください。厳しく見てください」に続けて、基準①②③を箇条書きで渡します。基準を渡さずに「チェックして」とだけ頼むと、採点する側も何を見ればいいか分からず、結局あいまいな答えが返ってきます。慣れてきたら「合格・不合格のどちらかを先に言ってから、理由を書いてください」と付け加えると、指摘がさらに具体的になります。
まとめ|今日やる一歩
長々書いてきたけど、この記事で持って帰ってほしいのはこれだけや。
- AIは、自分が作ったものの採点に甘くなる。これは欠陥やなくて、人間にも起きる構造上の話
- 作らせたAIと採点させるAIを分けるだけで、指摘の中身がまるで変わる
- 合格基準を先に決めて、何周まで回すかも先に決める。ここを決めずに回すと、お金と時間だけが膨らんでいく 今日やることは一つだけや。**今使こてる下書きの合格基準を3つ書いて、別のチャットに貼って、厳しく採点させてくれ。**その場で、指摘の中身が変わるのを自分の目で確かめてみてほしい。
ここまでで、うちのハツネは指示書を持ち、引き継ぎ資料を抱え、自分の机を持ち、そして今回、赤ペンの入った書類を受け取った。出す前に、誰かの目を通すという工程が、ハツネの仕事に組み込まれたわけや。
ただ、採点役をずっと自分一人でやり続けるのも、正直しんどい。次回は、この採点役を含めて、複数のAIで手分けする話をするで。

1人で抱えるから、詰まる|グラフエンジニアリングへ進むと、採点役を分けた続きの話が読めます。「出す前に確認する工程」を、先に机や道具の話から知りたい人は、机も道具もない部屋で、人は働けない|ハーネスエンジニアリングを読んでおくと、前回からの流れがつながります。
