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うちのAI社員、いまどこでつまずいてる?5つの見分け方

AIがうまく動かないとき、5つのうちどれを足せばいいのか。いま起きていることから選べる1枚の表と、5つが入れ子の1つのシステムだという関係を整理します。シリーズ全7回の最終回です。

AI大将が、一人前に仕事をするようになったAI社員の隣で、5つの設計思想の使い分け表を示している図

「AIがなんかうまいこと動かへんな」と思ったとき、どこを見直せばええか、迷ったことないやろか。頼み方がずれとるんか、渡す資料が足りひんのか、それとも仕組みそのものが甘いんか。今日はこのシリーズの最終回や。7日前に名前をつけたAI社員と、いまのAI社員を並べて、いま起きていることから足す考え方を選べる1枚の表を渡すで。

結論:1枚の表で決まります

先に結論を渡しとく。AIがうまく動かへんとき、見直す場所は5つしかない。**頼み方・渡す資料・環境・確認・分担。**この5つのどれかに、いま起きていることが当てはまる。

大事なのは、この表は故障診断やないってことや。AIが壊れとるわけやなくて、まだ足りひんものがあるだけ。新人が仕事でつまずいたとき、「あかん、こいつは使えん」とはならへんやろ。何が足りひんかったんかを見て、それを1つ足す。今日やるのはそれだけの話や。

このシリーズを7回かけてやってきたのは、まさにこの「何が足りひんかを見る目」を養うことやった。用語を覚えるための7回やなくて、自分の困りごとを、5つのどれかに翻訳できるようになるための7回や。今日、その翻訳の練習をここで一気にやってしまうで。

いま起きていること足す考え方戻る回
「いい感じに」で頼むと、ふわっとした答えしか返ってこない頼み方(プロンプト)第2回
話が長引くと前を忘れる。新しいチャットやと説明し直しになる渡す資料(コンテキスト)第3回
手作業が残る。事故が怖い環境(ハーネス)第4回
質が安定せん。詰めが甘い確認(ループ)第5回
大きすぎて崩れる分担(グラフ)第6回

表だけ見て、もう答えが出た人もおるかもしれへん。それでええ。この記事は、検索でここへ来た人にも、7回シリーズを追ってきた人にも、同じだけの価値を渡すつもりで書いとる。この表を保存しておいて、次にAIとのやりとりで引っかかったとき、また開いてくれたらそれで十分や。このあとは、この表の中身を1つずつ、短く説明していく。もっと深く知りたい考え方があれば、書いてある回へ戻って読んでくれたらええ。

この表のポイントは、「どれが正解か」を決める表やないってことや。5つとも、どれも間違ってへん。あなたの「いま起きていること」に、いちばん近い行がどれかを探すだけの表やで。複数の行に当てはまる気がしたら、いちばん困り度が大きいものから1つだけ選んだらええ。全部いっぺんに手をつけようとせんでもええ。

AIがうまく動かないとき、いま起きていることから足す考え方を選べる5行の使い分け表を、プロンプト・コンテキスト・ハーネス・ループ・グラフの5色で示した図解

この記事で分かること

  • いま起きていることから、5つのうちどれを足せばいいか分かる
  • 5つがバラバラの技術やなくて、入れ子になった1つの職場やと分かる
  • 7日間でAI社員がどう育ったか、実際の下書きを並べて分かる
  • 「ループの時代やからプロンプトは要らん」がなぜずれているか分かる
  • 次に何を1つ試せばいいか分かる、そのための表がそのまま手元に残る

その前に|5つ全部やる必要はありません

5つの見分け方に入る前に、もういっぺん言うとく。5つ全部を、いっぺんに使う必要はない。

普段のチャットで、ちょっとした相談や下調べを軽く聞くだけなら、頼み方(プロンプト)だけで十分や。文章や資料をつくる作業、たとえば議事録の整理やSNS投稿の下書きなら、渡す資料(コンテキスト)まで整えれば大抵は足りる。環境(ハーネス)や確認(ループ)、分担(グラフ)は、任せる仕事が大きくなったり、お客さんの目に触れる場面になったり、繰り返し同じ仕事を任せるようになったりしたときに、初めて出番が来る考え方や。

このシリーズを7回読んできた人ほど、逆に「5つ全部を毎回使わなあかん」と思い込みがちや。せっかく学んだんやから全部使わな損、という気持ちも分かる。せやけど、それは違う。ちょっとした下調べに、役割・条件・形式・禁止事項を毎回きっちり書いて、資料を読ませて、権限を線引きして、別のAIに確認させて……とやっていたら、AIを使うこと自体が面倒になって、結局チャットを開かなくなる。それでは本末転倒や。

まず普通に頼んで、結果を見て、物足りひんところだけ1つ足す。この順番さえ守っとけば、5つは重荷にならへん。これが、最終回でもういっぺん確認しときたいことや。

目安を1つ渡しとく。今の頼み方で、返ってきたものに「まあ、これでええか」と思えるなら、それ以上足さんでええ。「なんかちゃう」「もう一声ほしい」と感じたときだけ、表を開いて1つ選ぶ。この基準さえ持っておけば、5つを常にフル装備で使う必要がないことが、体感として分かってくるはずや。次の章から、5つを1つずつ短く見ていくで。

5つの見分け方

いま起きていることに近いところだけ読んでくれてかまへん。深掘りは、それぞれの回へ譲るで。読んでいる途中で「あ、これうちのことや」と思うところがあれば、そこが今日、足す考え方になる。

「いい感じに」で頼むと、ふわっとした答えしか返ってこない → 頼み方

「〇〇をいい感じにまとめて」と頼んで、なんか違うものが返ってくる。これがいちばん多い困りごとや。

原因は、AIの理解力やない。役割・条件・形式・禁止事項という4つのうち、どれかが伝わってへんだけの話。第2回で見た「お客さん対応を10年やってきた店長として」「300字前後」「そのまま送れる本文だけ」「価格を勝手に確約しない」。この4つを渡すだけで、返ってくるものは一気に安定する。

「言うたことと違う」は、実は渡す資料(コンテキスト)が足りひんときにも起きる。見分け方はシンプルや。**その場で役割・条件・形式・禁止事項を具体的に言い直したら直るなら、頼み方の話。**何度言い直しても直らんかったり、新しいチャットに変えた瞬間にまたずれるなら、それは次に話す渡す資料の話になる。

新人にたとえるなら、「いい感じにやっといて」だけで動ける新人はおらん。まずここが甘いと、この後の4つを重ねても意味がない。**5つのうちで、いちばん最初に固めるべき土台がここになる。**渡す資料を増やしても、環境を整えても、頼み方そのものが曖昧なままやったら、その上に積んだものは全部ぐらついたままになる。もっと詳しく知りたい人は、新人に「いい感じにやっといて」は通じない|プロンプトエンジニアリングへ。

前を忘れる、説明し直しになる → 渡す資料

同じチャットの中でも、ちょっと話が長くなると、AIが前に言うたことを忘れてる。新しいチャットを開いたら、うちのやり方をまったく知らん状態からのスタートになる。これが起きてたら、足りひんのは渡す資料や。

過去のやりとりの例、うちの言葉遣い、避けたい表現。こういう資料を先に渡しておくと、AIは「うちのやり方」を覚えた状態で仕事に取りかかれる。新人に分厚い引き継ぎファイルをどさっと渡すんやなくて、今日の仕事に必要な量だけ渡すのがコツや。渡しすぎても、AIはどこを見ればいいか迷ってしまう。

ちなみに、チャットでこれをやるなら、ClaudeやChatGPTの「プロジェクト」機能を使こたほうがええ。プロジェクトの中に、過去のやりとりの例やうちの言葉遣いのメモを先に置いておくと、そのプロジェクトの中で新しいチャットを開いても、資料を毎回貼り直さんで済む。「新しいチャットやと説明し直しになる」という、さっきの症状そのものへの対策や。実は、このAI大将のシリーズ記事も、プロジェクトの中で管理しながら書いとる。

多すぎても少なすぎても困る、というのが第3回のいちばんの学びやった。頼み方だけを直しても、この症状は消えへん。役割や条件をどれだけ丁寧に書いても、うちの過去のやりとりをAIが知らんままやったら、当てずっぽうの一般論に戻ってしまうからや。もっと詳しく知りたい人は、引き継ぎ資料を渡さずに、仕事はできひん|コンテキストエンジニアリングを見てほしい。

手作業が残る、事故が怖い → 環境

AIが下書きを作ってくれても、そこから先は結局自分で全部コピペして、貼り付けて、送信ボタンを押す。この手作業が減らへんし、AIが勝手に送信したらどうしよう、という不安も消えへん。これが起きてたら、足りひんのは環境や。

机と道具を用意するのと同じで、AIにどこまで触ってええか、どこは触ったらあかんかを先に決めておく話になる。注文状況を確認する権限は渡すけど、返金の処理はさせへん、みたいな線引きや。この線を先に引いておくと、AIは自分で動けるようになるし、事故も防げる。任せる範囲が決まっていないから手作業が残るのであって、AIの能力が足りひんわけやない。

第4回で扱った内容や。もっと詳しく知りたい人は、机も道具もない部屋で、人は働けない|ハーネスエンジニアリングへ進んでくれ。頼み方や資料をいくら磨いても、この不安は消えへん。消えるのは、触ってええ場所と触ったらあかん場所を、先に決めたときだけや。

質が安定せん、詰めが甘い → 確認

出てくる下書きの質が、毎回バラバラ。ある日はそのまま送れるけど、別の日は詰めが甘い。これが起きてたら、足りひんのは確認や。

自分の仕事に、自分で赤ペンは入れられへん。書いた本人は、自分の文章のどこが甘いか、意外と気づきにくい。これはAIも同じで、出す前に別のAIが見る一手間を入れると、質がぐっと安定する。毎回、人間が全部読み直すんやなくて、確認そのものをAIに任せるというのが、この考え方のいちばんの発想の転換や。

第5回で扱った、出す前に誰かに見てもらうという考え方や。もっと詳しく知りたい人は、自分の仕事に、自分で赤ペンは入れられない|ループエンジニアリングを見てほしい。頼み方は毎回同じでも、日によって出来が違うと感じるなら、原因は頼み方やなくて、確認する工程が抜けとるサインやで。

大きすぎて崩れる → 分担

1回の依頼に、あれもこれも詰め込みすぎて、途中で話が崩れる。返信の下書きだけやなく、注文状況の確認も、社内への報告も、全部いっぺんに1つのAIにやらせようとする。これが起きてたら、足りひんのは分担や。

1人で全部抱えるんやなくて、役割を割り振る。段取りと最終チェックをする係と、実作業をする係を分けるだけで、大きい仕事でも崩れんようになる。第6回で、ハツネの仲間が2人増えたのがこの話や。仲間が増えたぶん、1人あたりの守備範囲は狭くなって、逆に全体は速く、安定して動くようになる。

もっと詳しく知りたい人は、1人で抱えるから、詰まる|グラフエンジニアリングを見てほしい。5つの中でいちばん最後に出番が来る考え方やけど、任せる仕事が育ってきた証拠でもある。慌てて手をつけんでもええ。

7日前のハツネと、いまのハツネ

ここからが、この記事でいちばん見せたかったところや。

7日前、第1回で読者のみんなに、AI社員に名前をつけてもらった。うちの新人は「ハツネ」という名前になっとる。任せた仕事は最初から同じ。**お客さんからの問い合わせに、返信の下書きを用意する係。**この仕事を、7日間、同じハツネにずっと任せ続けてきた。

7日前、ハツネにこう頼んだ。「お客さんからのクレームメール、いい感じに返信作って」。何の準備もしてへん、初日のハツネや。返ってきた下書きがこれや。

お問い合わせいただき、誠にありがとうございます。
この度はご不便をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。
いただいたご意見は真摯に受け止め、今後の改善に努めてまいります。
何かご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

一見ちゃんとしてるように見えるやろ。せやけど、この文面には具体的なことが何一つ書かれてへん。お客さんが何に困っていたのか、これからどうするのか、返信を読んだ人が次に何をすればいいのか。全部抜け落ちとった。これは、ハツネの能力が低かったからやない。頼んだこっちが、仕事の輪郭を何も渡してへんかったからや。

そして今日、7日目のハツネに、同じ種類の問い合わせを渡してみる。ただし、この7日間で足したものが5つある。

  1. 頼み方:役割・条件・形式・禁止事項の4つを、依頼のたびに渡すようにした
  2. 渡す資料:過去にうまくいった返信の実例と、うちの言葉遣いのメモを、先に読ませるようにした
  3. 環境:注文状況を確認する権限は渡したが、返金の処理と価格の確約はさせないよう決めた
  4. 確認:下書きを出す前に、別のAIに「謝罪は1回か」「次にどうするかが書いてあるか」の2点だけ見てもらう一手間を入れた
  5. 分担:注文状況を調べる係と、文面を整える係を分けた これを全部踏まえたうえで、今日のハツネに「配送が遅れているお客さんへの返信」を頼むと、こう返ってくる。
このたびは、ご注文の商品到着が遅れており、
ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
配送状況を確認したところ、現在は配送センターに滞留しており、
明日中には発送される見込みです。
到着まで、今しばらくお待ちいただけますと幸いです。

謝罪は1回。実際の配送状況を確認したうえで、次にどうなるかまで具体的に書いてある。価格や納期の確約もしてへん。**モデルは変えてへん。課金額も変えてへん。同じAI、同じ契約のまま。**足したのは、頼み方と、渡す資料と、環境と、確認と、分担の5つだけや。

7日前のハツネと、今日のハツネ。同じ子や。育ったのはAIやなくて、こっちの頼み方や渡し方の方や。ハツネというモデルの中身は、7日前から1ミリも変わってへん。変わったのは、こっちがハツネに何を渡すようになったか、それだけやで。

最初のクレーム返信を読み返すと、正直恥ずかしいくらい抽象的や。でも、あれが悪かったわけやない。あの段階では、頼み方すら固まってへんかったんやから、あれが精一杯の答えやった。7日間かけて、ハツネが賢くなったんやない。こっちが、頼み方・渡し方・任せ方を、1つずつ具体的にしていっただけや。

これがシリーズを通して伝えたかった、いちばん大事なことになる。AIが勝手に進化して、いつか「いい感じに」で伝わる日が来る、という話やない。5つの考え方を、こっちが順番に足していくことで、同じAIが任せられる相手に変わっていくんや。7日でここまで変わるなら、あなたの隣にいるAIも、まだ何も足してへんだけかもしれへん。

もう一つ、この7日間で変わったことがある。ハツネに頼むときの、こっちの気持ちや。1日目は「ちゃんと返ってくるやろか」と、毎回どこか不安やった。7日目のいまは、任せてから離席して、戻ってきたら下書きができとる。任せて席を立てるかどうか。これも、5つの考え方が積み上がった結果として起きる変化やで。

第1回でハツネに何も条件を渡さず頼んだ抽象的な下書きと、7日後に頼み方・渡す資料・環境・確認・分担の5つを足して頼んだ具体的な下書きを左右に並べ、間に5つの段を階段状に積み上げたビフォー・アフター図解

5つはバラバラやない|1つの職場や

5つの考え方を、ここまでバラバラに紹介してきたように見えるかもしれへん。せやけど、実際は違う。5つは、入れ子になった1つの職場や。

いちばん外側の枠が、環境(ハーネス)。ハツネが働く場所そのもの。触ってええ道具、触ったらあかん引き出し、権限の範囲。この枠があるから、ハツネは安心して動ける。枠がないまま働かせるのは、机も鍵もない部屋に新人を放り込むようなもんや。

その枠の中に、分担(グラフ)のマスがいくつか並んどる。注文状況を調べるマス、文面を整えるマス、最終チェックをするマス。ハツネと仲間2人が、それぞれのマスを受け持っとる。マスが分かれているから、1つの仕事が大きくなっても、誰か1人が抱え込んで崩れることがない。

1つのマスの中を覗いてみると、そこに頼み方(プロンプト)と渡す資料(コンテキスト)が入っとる。「配送遅延の返信を、店長の立場で、300字で」という頼み方と、「過去の返信例」という資料。この2つが、マスの中身そのものになる。マスがどれだけきれいに分かれていても、中身が空っぽやったら、そのマスは何も生み出さへん。

そして、そのマスをぐるっと回っとるのが、確認(ループ)。下書きが出たら、別の係が見て、直して、また戻す。この回転があるから、質がバラつかへん。

**外側から順に、環境が職場を作り、分担が役割を配り、頼み方と資料がマスの中身を決め、確認がその質を回す。**5つは別々の技術やなくて、1つの職場を、外側から中身まで見ていっただけの話やったんや。

第1回でこの入れ子の図を出したときは、まだ何も中身が入ってへんかった。名前だけついた、手ぶらのハツネが立っとっただけの図やった。7回ぶんの中身が全部そろった今、同じ図を見返すと、意味がまったく違って見えるはずや。同じ枠線でも、中に住んどるものが増えれば増えるほど、その職場は現実に働く場所として機能しはじめる。図が完成するというのは、そういうことやったんや。

外側の枠が環境、その中の3マスが分担、1マスの中に頼み方と渡す資料、マスを回る矢印が確認という入れ子構造を、ハツネと仲間2人が実際に働いている姿で埋めた完成版の図解

「ループの時代やからプロンプトは要らん」は、ちょっと違う

ここで、最近よう聞くようになった主張に、はっきり答えとく。**「これからはループの時代やから、プロンプトなんてもう要らん」**という声がある。

わしは、これはちょっと違うと思っとる。

さっきの入れ子の絵を思い出してほしい。ループは、マスをぐるぐる回す確認の仕組みや。せやけど、回すマスの中身が空っぽやったら、何回転させても中身は空っぽのままや。頼み方(プロンプト)と渡す資料(コンテキスト)は、そのマスの中身そのものになる。土台がなかったら、確認する対象すら存在せえへん。

これは、車の性能がいくら上がっても、エンジンが要らんくなるわけやないのと同じ理屈や。自動運転がどれだけ進化しても、エンジンなしでは車は走れへん。ループやグラフといった、新しく出てきた考え方が便利になればなるほど、実はその中で回っているプロンプトとコンテキストの精度が、余計に効いてくるようになる。新しい技術が古い基礎を要らんくするんやなくて、新しい技術ほど、基礎の精度がそのまま結果に跳ね返る。

「ループやグラフを覚えたから、もう頼み方は適当でええ」と考える人が増えると、逆にAIの返答は不安定になっていく。回転数を上げても、マスの中身がふわっとしたままなら、出てくるものもふわっとしたままや。新しい考え方を覚えるたびに、古い考え方を捨てるんやなくて、**古い考え方の上に、新しい考え方を積む。**この順番を間違えると、せっかく覚えた5つが噛み合わへん。

「〇〇はもう古い」「これからは〇〇の時代」という言い方は、AIの世界に限らず、いつの時代も耳目を集めやすい。せやけど、実際に手を動かしとる現場では、古い基礎と新しい仕組みは、たいてい両方とも要る。5つのうちどれか1つだけを覚えて満足するんやなくて、5つを積み木のように重ねるという感覚を持っておくと、この先どんな新しい用語が出てきても、慌てんで済むはずや。

この先、6つ目、7つ目の「〇〇エンジニアリング」が出てくるかもしれへん。そのときも、やることは同じや。新しい名前に振り回されるんやなくて、「これは頼み方・資料・環境・確認・分担のどれに近い話か」を、まず自分の言葉で確かめる。土台さえ崩さんかったら、新しい用語はただの語彙が増えるだけの話になる。

このシリーズを7回通して読んできた人には、もう伝わっとると思う。5つは新しい順に古いもんを置き換えていく技術やない。**全部同時に、いつまでも必要な考え方や。**これが、7回かけていちばん伝えたかった結論になる。

やり方|次に足す1つを選ぶ

理屈は分かった。ここからは、今日やることに落とし込むで。

  1. **直近でうまくいかなかった依頼を1つ思い出す。**今週、AIに頼んで「なんか違うな」と感じた場面でええ
  2. **最初の表から、足す考え方を1つ選ぶ。**いま起きていることに、いちばん近い行を選ぶ
  3. **その回へ戻る。**5つのどれかを選んだら、該当する回の記事を開いて、具体的なやり方を読む
  4. **手を1つだけ試す。**5つ全部やらんでええ。今日は、選んだ1つだけでええ

今日やることとして「次に足す1つを、選ぶ」という中央の文字と4つのステップ、最下部に5つ全部やらんでええという励ましのメッセージが並ぶ図解

この4ステップで肝心なのは、2番目や。5つ全部から選ぼうとすると迷ってしまうから、**直近の失敗を1つ、具体的に思い出すところから逆算する。**その失敗が、5つのどれに当てはまるかは、最初の表を見ればすぐ分かる。「なんか違う」で止まらずに、どこがどう違ったかまで言葉にできると、選ぶ考え方も自然と1つに絞れてくる。

第1回で、自分のAI社員に名前をつけて、任せたい仕事を1つ決めてもらった表があった。あの表と対になる形で、もう1つ表を用意しとく。

決めること例(問い合わせ返信の下書き)あなたの場合
直近でうまくいかなかった依頼返信の下書きが、毎回ちょっとずつ違う形で出てくる____
いま起きていること質が安定しない____
足す考え方確認(ループ)____
戻る回第5回____
今日ためすこと合格基準を3つ書いて、別のチャットに貼る____

この表で、いちばん大事なのは上から3行目や。**「いま起きていること」が決まれば、「足す考え方」は自動的に決まる。**迷う必要はない。最初の表と見比べながら、自分の「いま起きていること」の行を探して、その右にある考え方をそのまま採用してくれたらええ。

埋め終わったら、いちばん下の「今日ためすこと」だけ、今すぐやってみてくれ。5つ全部やらんでええ。1つでええんや。1つ足して、それで十分に感じたら、そこで止めてもかまへん。物足りひんと感じたら、また表に戻ってきて、次の1つを探せばええだけや。

この表は、1回埋めたら終わりのもんやない。今週は頼み方を足して、来週は渡す資料を足す、というふうに、必要になるたびに繰り返し使こてほしい。7日前のハツネも、5つを一気に渡されたわけやなかった。1日に1つずつ、順番に足していっただけや。あなたの仕事も、同じペースで十分に育っていくで。

つまずきやすいところ

ここまで読んで、実際に手を動かし始めると、いくつか引っかかるところが出てくるはずや。よくあるつまずきを先に潰しとく。

5つを一度に足そうとする

最終回まで読むと、「全部使わな」という気持ちになりやすい。せやけど、それは違う。1つ足して、様子を見て、まだ足りひんかったら次を足す。**一度に2つ以上を足すと、何が効いたのか分からんようになる。**焦らんでええ。

頼み方を飛ばして、先の話へ行く

環境や分担の話はおもしろいから、そっちから手をつけたくなる気持ちも分かる。せやけど、頼み方が甘いままやと、その上に何を積んでも土台から崩れる。順番は、必ず頼み方からや。土台を飛ばして応用から入ると、後になって「なんかうまいこといかへんな」と、結局この記事に戻ってくることになる。

用語を覚えることが目的になる

プロンプト、コンテキスト、ハーネス、ループ、グラフ。この5つの名前を覚えることが目標になってしまうと、本末転倒や。用語は、いま起きていることを言葉にするための道具でしかない。名前を覚えるより、自分の「いま起きていること」を1つ言葉にできる方が、はるかに価値がある。

うまくいっているものまで直そうとする

5つを知ると、今までうまくいっとった依頼まで、「もっとよくできるんちゃうか」と手を入れたくなる。せやけど、うまくいっとるもんは、そのままでええ。手を入れるのは、いま困っとる依頼だけでええんや。うまくいっているものに手を入れて、逆に崩れてしまったら本末転倒やで。

表の「戻る回」を読まずに、なんとなく試す

最初の表で足す考え方が決まったら、面倒がらずに該当する回を開いてから試してほしい。「確認やな、なんとなく別のAIに見せてみよう」で終わらせると、効き目が半分も出ないことが多い。それぞれの回には、具体的な聞き方や渡し方まで書いてある。1回分だけでええから、目を通してから手を動かすと、遠回りにならへんで。

よくある質問

5つのうち、どれから始めればいいですか?

まずは頼み方(プロンプト)から始めてください。役割・条件・形式・禁止事項の4つを渡すだけで、多くの依頼はここだけで十分な精度になります。それでも物足りないと感じたときに初めて、渡す資料や環境の話に進めば十分です。順番を飛ばして環境や分担から手をつけると、土台が甘いままなので、結局は頼み方に戻ってくることになります。

5つを全部覚える必要はありますか?

ありません。この記事の最初の表を保存しておいて、困ったときに見返す使い方で十分です。5つの名前を暗記することよりも、自分がいま困っている状態を言葉にできることの方が大切です。名前を忘れても、「なんかちゃう」「前の話を忘れとる」といった実感さえ言葉にできれば、この記事の表からすぐに該当する考え方を探せます。

新しい考え方や用語が出てきたら、どうすればいいですか?

この記事で説明した通り、新しい考え方は古い考え方を置き換えるものではなく、多くの場合は既存の5つのどこかに位置づけられます。新しい用語を聞いたときは、まず「これは頼み方・資料・環境・確認・分担のどれに近いか」を考えると、混乱せずに整理できます。

チャット画面しか使っていません。5つ全部が必要ですか?

必要ありません。チャット画面だけで完結する使い方なら、頼み方と渡す資料の2つで、ほとんどの場面をカバーできます。環境・確認・分担は、複数のツールを組み合わせたり、業務として仕組み化したりするときに効いてくる考え方です。今すぐ必要になる人は多くありません。

まとめ|7日間で、ここまで来ました

長いシリーズになったけど、最終回で持って帰ってほしいのはこれだけや。

  1. AIがうまく動かへんときは、頼み方・渡す資料・環境・確認・分担の5つのうち、いま起きていることに当てはまる1つを探せばええ
  2. 5つはバラバラの技術やなくて、入れ子になった1つの職場。頼み方と資料が土台で、分担が枠を作り、確認がその質を回す。新しい考え方が増えても、この土台は要らんくならへん
  3. 5つ全部を一度にやる必要はない。まず普通に頼んで、物足りひんときに1つだけ足す。それでええ 7日前、あなたは自分のAI社員に名前をつけた。今日、そのAI社員は、頼み方も、渡す資料も、環境も、確認も、分担も、少しずつ整った状態で仕事をしとる。ここまで来たのは、AIが賢くなったからやない。あなたが、5つの考え方を1つずつ足していったからや。

これで、7回のシリーズは終わりや。でも、ハツネの仕事は終わってへん。今日困った依頼が出てきたら、また最初の表に戻ってきてくれ。**次に足す考え方を1つ選んで、今日、試してみてほしい。**それが、このシリーズがずっと言い続けてきた、たった1つのことや。

わし自身、この7回を書きながら、ハツネの成長を誰よりも近くで見てきた気がしとる。最初はぎこちなかった下書きが、7日かけて、そのまま送れるところまで来た。読んでくれたあなたの隣にも、同じように育てられるAI社員がおる。その子に、今日、次の1つを渡してやってくれ。

AI大将が一歩下がった位置に立ち、公式LINEへの登録を促すボタン風ラベルと、7回分の考え方を身につけたハツネが並ぶCTA画像

シリーズの全体像をもう一度見返したい人は、AIを「雇う」と考えたら、5つの設計思想が全部つながったへ。分担(グラフ)の考え方をまだ読んでいない人は、1人で抱えるから、詰まる|グラフエンジニアリングから読んでみてほしい。